大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)540号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人松嶋泰の上告理由第一点について。

第一、公職選挙法施行令第三四条に「選挙人」とあるは、投票の場所に投票のために来た一般の選挙人を指すのであつて、投票立会人のごとき選挙事務の管理に関与するものを含まないことは、同条制定の趣旨から明らかである。原判決は判示第十投票所において、選挙人畑中貞次郎が投票箱を点検した事実を認定し、所論の違法はない旨判示しているけれども、原判決挙示の証拠によれば同人は右投票所における投票立会人であることが明らかであるから、同人の点検をもつて、同令三四条の要請を充たすものとした原判決の判断はあやまりであり、他に一般の選挙人に点検せしめた事実のないことは、本件において争のないところであるから、この点において右選挙は選挙の規定に違反するものと云わなければならない。しかしながら原判決は前示のごとく畑中貞次郎が点検した事実を認定しているのであつて、同人が投票開始の前、右投票箱を点検した際には投票箱は空虚であつたことは原判決認定から、おのずから推認されるのであるから、右違法は未だもつて本件選挙の結果に異動を及ぼすことのないものというべきである。その余の論旨は結局、事実誤認の主張であつて、上告適法の理由とならない。

第二、所論のごとき手続上の瑕疵は未だもつて選挙の無効を来たさしめる原因とするに足りないとする原判決の判断は正当であつて論旨は理由がない。

同第二点は事実誤認の主張に帰し、上告適法の理由とならない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条により、全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例